ニューロスクエア
—脳とこころのライブトーク— へようこそ!
「脳」とは一体どのようなものでしょうか。心臓や肝臓などと同じように体内の臓器であり、その役割や機能は実にさまざまです。
記憶、計算、決断、行動選択、身体の動きのコントロール
時に迷い、悩み、苦しみ、そして喜び、幸福だという感情を生む
他者と交わり、与え、与えられ、過去を思い起こし、未来を想像する
脳のなかの1000億個もの神経細胞が、キラキラと活動する様をこの目で見て、その意味を
理解したいなぜ生きているうちの3分の1もの時間をヒトは眠りに
費やすのか人とこころを通わすことのできるロボットを作りたい
なぜ寿命があり、死があるのか。老化とは何なのか
脳の能力、人間の可能性をこれ以上広げることはできないのか
家族、あるいは友人を苦しめた病気をどうしたら根絶することができるのか
RIKEN CBSの研究者たちは、それぞれの想いを原点に、周りの人々から助けられ、導かれ、背中を押され、今ここで脳とこころの探求を続けています。
このニューロスクエアでは、研究者たちが研究と想いをお伝えし、みなさんからの率直なメッセージを受け取ることを期待しています。 脳とこころを持ち寄り、つなぎ、共に思考する場所がニューロスクエアです。 さまざまな個性が集まり共に考えることで、脳とこころの研究が前進することでしょう。
本シリーズで、みなさんにお会いできるのを楽しみにしております。
理化学研究所 脳神経科学研究センター
RIKEN Center for Brain Science
センター長
影山 龍一郎
研究って楽しいですか?
はい、楽しいです。期待と違う結果が出て解釈に困ることもよくありますが、毎日違うこと、新しいことが分かるので、とても楽しいです。ただ、私たちがやっているような病気の研究では、常に苦しんでいる患者さんのことも考えるのでつらいこともあります。
実際に行われているDNA遺伝子操作の治療とは具体的にどのようなことをするのですか? 開頭手術?
マウスでは頭蓋骨に小さな穴を開けて、そこから遺伝子操作をするためのツールを脳内に届けるベクターと呼ばれるウイルスを脳に注入しています。ヒトに適用するときにどのような方法が良いかは、今後の動物実験の結果次第で検討することになります。
研究をしていて苦しい時はどんな時ですか? プレッシャーなどはありますか?
今まさに病気で苦しんでいる患者さんのことを考えるときが一番つらいです。もっと良い研究方法があるのではないかといつも考えています。研究成果を出すことのプレッシャーよりも、やっていることが患者さんにとって役に立つことなのか、無駄ではないのか、ということが一番プレッシャーに感じます。
APP遺伝子のA673T変異を持っているか持ってないか検査はできますか?
方法としては血液検査でDNAを抽出して配列解析という方法で検査できますが、ヒトのゲノムDNAの情報はとても大事な個人情報で、解析には倫理的な問題も関係するため、今すぐに簡単に検査することはできません。
アミロイドβ→タウタンパクの順に蓄積するというお話だったので、アミロイドβがタウ蓄積に何らかの影響(促進など)しているのかと思ったのですが、タウよりアミロイドβの除去が重要ということはアミロイドβとタウの蓄積に相互的な影響はないということでしょうか?
直接的なものかは分かりませんが、アミロイドβとタウの相互作用はあると思います。ただ、はじめはそれぞれ独立して脳の別の場所に形成されていき、あるタイミングで相互作用が生じ、アルツハイマー病の次のカスケードが始まるのだと思います。どちらかを完全に止められればアルツハイマー病にはならないと思いますが、60歳以上の人には必ず脳内に出現してくるタウ病理を標的にするよりも、100歳を超えても20~30%には出現しないアミロイド病理を標的にする方が理にかなっていると考えています。
アルツハイマー病の研究用に作ったサルというのは本来の生物とどのような点が違うのでしょうか。
マーモセットの遺伝子に、遺伝性アルツハイマー病の患者さんが持っている病的な遺伝子変異を導入することで、マーモセットの脳にアルツハイマー病と同じ変化が起きる様に、遺伝子改変をしています。これまで主流であったマウスモデルと比較して、マーモセットは霊長類であるため、脳の機能や構造、認知行動、代謝機能や免疫機能など、アルツハイマー病の病態に重要な点でヒトにより近い生物学的特徴を持っています。そのため、アルツハイマー病患者さんの状態をより正確に反映でき、今までマウスでは分からなかったことが分かるようになると考えられます。また、薬に対する反応もヒトに近いため、マーモセットモデルを利用することで新しく開発された薬をより早く患者さんに届けることができる可能性があります。
研究って楽しいですか?
とっても楽しいです。特に、理研CBSのほとんどの研究者は楽しさに動機づけられて研究をしています。その点では私は全くコントラリアンではないですね。
コントラリアンの存在価値、面白いです。最近は個を大事にする教育社会となり、逆にコントラリアンだけになりグループ形成を忘れていく傾向にあります。全体の中で互いに影響しあう機会が減るのが残念でもあります。
コントラリアンというのは、「この人はコントラリアン、あの人はコントラリアンではない」みたいな形で、個人個人の単位でハッキリ白黒つけて分類できるものではなくて、もっと多角的・多面的な側面を持ったものだと考えています。
例えば、スポーツでは人気のあるサッカーが好きで多数派に属するけれども、音楽ではメジャーな分野には興味がなくてインディーズバンドを追いかける少数派である、といった形で誰しもコントラリアンになる場面を持っています。各場面場面で少数派が生まれ、その少数派は普段はグループとしてまとまっているかもしれませんが、別の場面で多数派に属した時に、コントラリアンの要素が多数派に影響を与え、集団全体をダイナミックに変えていくという効果があるのではないかと思います。
コントラリアンになりたいと思ってもなかなかむずかしい。私はむしろコントラリアンになりたかった。今はコントラリアンと呼ばれる人との反対の人の方が問題視?されるのか。
ヒトの場合、少数派になろうとしてなる意図的なコントラリアンもあります。いわゆる意図的な「逆張り」です。しかし、それ以上に、少数派になろうと意図しないものの、集団と異なる行動をとったために結果的に生じるコントラリアン行動が重要で、「そういう少数派の行動が集団全体にポジティブな影響を与えているのではないか?」という仮説を立てて研究をしています。多様性が尊重される社会では、誰しもが場面場面に応じてコントラリアンになったり、フォローワーになったりしている、私はそう考えています。
宮本先生のコントラリアンのお話とても面白かったです。緊張で(?)左手の指がピンとしているのが可愛らしかったです。ペアレントメンターの活動をしていますが、“コントラリアン”の言葉に勇気をもらいました!
ありかどうございます。ガチガチに緊張しておりました。
天邪鬼と呼ばれる人の基準、定義はどのようなものでしょうか。「変わり者」の定義も集団によって変化するのではないかと思います。どのようにとらえていますか。
日常生活において、誰があまのじゃくなのかを定義し科学的に証明するのはとても難しいです。そこで、私たちの研究室では、意思決定課題(ゲーム)を使って複雑な日常場面での状況をなるべく単純化することにしました。具体的には、実験参加者のみなさんに集団で報酬の山分け課題を行ってもらい、敢えて総報酬量の少ない選択肢の方を選んで少数派になろうとした参加者さんをコントラリアン(あまのじゃく)と定義し、集団の中にあまのじゃくがいることで報酬が平等に分配されることが分かりました。
コメントの通り、状況に応じて「あまのじゃく」な行動や「あまのじゃく」な人も変わります。「あまのじゃく」は多数派が存在するからこそ、それとは異なる行動をとる逆張り家として現れるもので、ただの変わり者ではなく、とても社会的な存在ではないかと考えています。そういう側面から、少数派の行動や個体の集団におけるポジティブな役割について研究していきたいと思っています。
コントラリアンが集団にとって価値を与えるという話がホモ・サピエンスが旅に出てあっという間に拡大したという話が重なって聞こえました。
ありがとうございます。面白い着眼点です。ヒトのコントラリアン行動による未開の場所や分野の探索が、高度な文明や豊かな文化を作ってきたのかもしれません。
研究者の先生方が数ある理研の中から和光を選んだ理由を知りたいです。
理研和光事業所には、日本で唯一の脳に特化した研究者が集まる研究センター理研CBSがあり、脳の色々な仕組みや機能について理解を進める研究者が切磋琢磨しています。人間の様々な行動が、脳のどのようなはたらきによって生じるのかについて興味があった私は、迷わず理研CBSを選びました。
コントラリアンは流行りを生みだすきっかけ等にも関係があるのでしょうか。またメタ認知が得意不得意等もあるのか気になりました。
私たちの研究室で、実験参加者さんに行ってもらった報酬山分け課題(ゲーム)で、多数派と異なる挙動を示した「コントラリアン」の中には、環境の変化に敏感で多数派よりも早く行動を切り替える戦略を採った結果、コントラリアンになった参加者さんもいました。「環境の変化と環境の変化による他者行動の変化をいち早く予想できる人がコントラリアンになる」という仮説を立てて、コントラリアン戦略がメタ認知と関係しているか、研究を進めています。
認知の研究の話がとても面白かったです。他者を投影する認知がもしその認知が強い神経回路を持つ人は、優しい人と言われるとではないかと興味があります。認知が性格とひもづいているともっと色々コミュニケーションで役立つのかなと思いました。
ありがとうございます。性格と認知の関係はぜひ私も研究したいです。他者を想像できることと、他者に寛容になれることは表裏一体なことではないかと個人的に考えていまして、研究成果で社会に貢献が出来ると嬉しいです。
知ってるのに忘れた(知らないことになってる)ことはどこ?
私たちの過去の研究で、脳の後部頭頂葉が過去に経験したことを知っていると判断する「記憶の検索」を担っていることを発見しました。同じ領域は、知っていることや知らないことに対する自信の情報の統合にも関わっています。
脳にとって世界(外界?)物理的な外部環境はどのようなものだと考えていますか?
脳は、私たち人間や動物が、物理的な外部環境がどうなっているのかを理解して、その理解に基づいて外界に対するアクション(行動)を決めるための器官だと考えています。脳の中には外界がどうなっているかを縮約した「外界のモデル」のようなものがおそらく出来上がっているのですが、行動を決定するためにこのモデルを有効に生かすためには、自分自身のモデル(自分がどの程度、環境に対して働きかけが出来るかについてのモデル)も必要です。外部環境のモデルと自分自身のモデルを比較・統合するときに働く心理的プロセスが「メタ認知」であると、私は考えています。
研究って楽しいですか?
研究者は退屈な知識人で人生を楽しむことを知らない、という誤解があります。これほど事実からかけ離れたものはありません。科学とは発見と創造性であり、オープンな思考を持ちつつ批判的に物事を考えることのできる人物を惹きつけます。研究室で研究者たちとブレインストーミングをしたり、国際的な会議などで議論することはとても楽しいですし、この仕事の最も素晴らしい部分の一つです。
扁桃体が反応した後ブレーキの役割りとして前頭前皮質と海馬が行っているといわれている。この現象が起こった後にこれらのものはすりへってしまうのか?(物理的に)
これらの脳のシステムは、繰り返し使用しても必ずしも劣化するわけではありませんが、その機能障害はトラウマ関連の精神疾患に関与しています。特に、前頭前野の機能は、心的外傷後ストレス障害を発症する個人において低下することが知られています。
研究者になるために一番大切なモノ・コトはなんですか?
さまざまな特性の組み合わせだと思います。新しい科学的発見をするには、創造性と想像力が非常に重要です。しかし、一見すると創造的思考とは対立するように見える細部への注意と体系的かつ論理的な思考も、また必要不可欠な特性です。これに加えて、強い野心と真実を求める欲求が、優れた研究者を作る要素だと私は考えています。
私たちはそれぞれの状況を前頭全皮質の内部モデルが作っていて、世界を解釈していると理解しましたが、それを生み出すような記憶はどこに何が蓄積されているのでしょうか?
これは活発な研究分野です。私たちは現在、感情の内部脳モデルを構成する記憶の神経可塑性および記憶の保存が内側前頭前野でどのように、またはどの程度発生するかを検証しています。これまでの研究では、内側前頭前野の特定の細胞集団が、内部モデルに依存する記憶の表現に必要であることが示されており、これらの細胞が記憶の保存に関与していることを示唆しています。
研究って楽しいですか?
楽しいです! 失敗することや上手くいかないことも多いのですが、実験結果が仮説と合った時や、思いもよらなかった結果を見ながら、一体何が起きているのかと色々と考える時などにワクワクします。
線虫の脳はどのくらいの大きさですか?
体の直径が60µm程度のC.エレガンスでは、神経細胞やグリア細胞などを合わせた200個程度が頭部にあります。
302個という神経細胞しかない生物(線虫)を使っているのはそれ以上神経細胞が多いと反応が複雑になるからですか?
線虫の利点はたくさんありますが、神経細胞の数が少なく302個と決まっており、すべての神経細胞間の接続がわかっているので、脳の中をどのように情報が伝わるのかを調べやすいというのは私たちが線虫を実験に用いる理由の一つです。線虫は応答自体もシンプルなことが多いのですが、さまざまな応答を生み出す脳の仕組みや、神経細胞の数と応答の複雑性の関係については完全にわかっていません。
画像でカラフルに光っていたのが気になりました。なぜでしょうか?神経細胞が光っている事で示している図で色が分かれていたのはそれぞれ何を示していたのでしょうか?
画像でお見せしたNeuroPALという細胞をマッピングする技術を使用した線虫では、302個の神経細胞が4色の蛍光タンパク質を異なる比率で持っています。このため、蛍光顕微鏡を使うとそれぞれの神経細胞が「違う色」に見え、その「色」から、どの細胞なのかがわかります。
女性だからこそできる研究ってありますか?
ほとんどの研究は性別に関係なく行うことができますが、女性の被験者を相手にする研究や妊娠出産などの女性特有の仕組みを調べる研究など、「女性だからやりやすい」研究はあるかもしれません。フィールドワークなどで宗教的・政治的な制約がある地域を訪れる場合なども、研究者の性別によって研究の不可や行いやすさが異なる場合があるかと思います。
研究者の1日の過ごし方、もしくはライフスタイルを知りたいです。こだわりとかどんな生活をしているのか!?
1日の過ごし方は人によってかなり違うと思いますが、私の平日の過ごし方は会社勤めの方と大差ないと思います。
6:30 – 起床、メールチェックをしながら朝の準備
8:00 – 小学生を送り出すのと一緒に通勤
9:00 – 研究室到着。実験、書類作成、発表準備など
12:00- お昼ご飯
13:30- 研究室内でのセミナーやラボメンバーとの話し合い
19:00- 帰宅。夜ご飯や子供の学校の準備の手伝いなど
21:30- 寝るまで、やり残した仕事をできるだけ進める
日によって会議や授業、出張などを行い、海外の研究者と真夜中に会議や仕事をする時もありますが、小さい子どものためにできるだけ生活リズムを崩さないように気をつけています。
最初はシンプルな動物モデルでメカニズムを解明してヒトに応用する際に、一番大変なこと、留意しなければならないことって何でしょうか?
私たちは、モデル動物≒ヒトだと考え研究を進めていますが、やはり生物によって違うことがたくさんあるので、観察した結果が生物に共通しているのか、それともそれぞれの生物が持つ特別な仕組みなのかを気をつけて調べる必要があります。また、生物によってできる実験が違うため、ある生物で分かったことをほかの生物で調べようとしてもできないことがあり、ヒトにまで応用するには長い時間がかかります。
線虫はわずか5℃の温度変化で行動を変えることができるようですが、なぜこのような低エネルギーで変化を起すことが可能なのでしょうか?
線虫は0.01ºC/cmの温度勾配もわかると言われています。私たちも含め多くの生物は、刺激を受け取った細胞やその情報が伝わる過程で、刺激の情報を増幅される仕組みを持っていて、少しの刺激でも敏感に感じることができます(ヒトでは、目の視細胞が光を感知する時に情報を増幅する仕組みがよく知られています)。
C.エレガンスが飼育温度+5℃の時に特殊な行動をすることをお聞きしましたが、逆に-5℃(温度が低い状態)では何か特殊な行動をするのでしょうか?
とても良いご質問をありがとうございます! 飼育温度+5℃や+3ºCでは行動の変化が見えたのですが、-5℃では見えませんでした。周りの温度が変われば良いというわけではないようです。
研究者のみなさん、プレゼンがとても上手で驚きました。研究者として研究を発信するということを昨今では強く意識されているのでしょうか?
大きなイベントでは特にそうですが、聴衆に貴重な時間をより有意義に使ってもらえるよう意識しています。プレゼンで的を絞ることは重要だと思っています。
シナプスの強さのゆらぎはどのような仕組みで生まれるのでしょうか?
コンピュータにてゆらぎを人工的に取り入れ、AIがひらめくようにするにはどのような技術が必要なのでしょうか?
アクチン分子などの変化によるものと考えています。またゆらぎの大きさには細胞外基質なども関与していると考えられています。
ひらめくAIが作れると良いですね。今後の研究課題です。
確性にゆらぎは必要? ゆらぎの調節は可能?
ゆらぎは単一シナプスの強さを変化させてしまいますが、学習込みの場合にはシナプス集団の統計的性質を安定化させる効果もありそうです。従って、何に関する「正確性」かによって回答は変わってきます。疾患モデルでゆらぎの異常がみられることから、ゆらぎは調節されていると考えています。
人は、脳のゆらぎを感じ取れるのか?
集中している時とボーっとしている時の変化ことをゆらぎという?
シナプスは神経活動に影響を与え、ある種の神経活動が知覚となりますので、シナプス集団のゆらぎを感じ取れる状況もあるのではないかと思います。われわれは神経活動に関係なく起こるシナプス変化のことをゆらぎと呼んでいます。集中している時もボーっとしている時も神経は活動していますので、程度の差はありますが、ゆらぎと学習の両方でシナプスは変化していると思います。
野球でのイップスだったり、私がピアノ練習で何回か経験したことがある、慣れているはずのフレーズがいきなり弾けなくなる現象は、今まで“心理的なものに起因する”と説明がとどまっている感じだったのですが、そういったものもシナプスのゆらぎと関連づけて説明できるものでしょうか?
そのような現象が起こっている期間の長さから考えると、神経活動の問題というよりはシナプスの影響なのかもしれません。
ゆらぎが原因となっている可能性はあると思います。しかし、何らかの意図しない学習によって該当記憶が上書きされたといったほかの可能性もあるように思いました。
AIが睡眠によって学習効果が上がるという研究決果が最近発表されましたが、「ゆらぎ」との関連はあるのでしょうか?
AIの学習効果を上げるオフライン学習(行動していないときの学習)メカニズムは複数提案されています。過去の記憶をリプレイして再学習したり、類似パターンを生成して学習したりということが提案されています。脳のシナプスゆらぎの体積依存性などを取り入れているAI研究は少ないように思います。
「ゆらぎ」のお話が興味深かったです。宮沢賢治が生徒と共に“ボーッとする時間”を大切にしていたというお話しを思い出しました。
そうですね、散歩会議をする会社もあるようですし、アイディアは机に向かっている時以外に降ってくることもあるようです。宮沢賢治の脳状態を再現する秘訣が分かると良いですね!
ゆらぎというのはいわゆる“乱数”のような、その程度の大小は何かにしたがっているわけではないのでしょうか?
それともゆらぎにも根幹には一定の法則があると予想されているのでしょうか?
ゆらぎの根幹には一定の法則があると思います。理想気体のモデルのように、ミクロには一定の法則に従っていても集団として乱数的な振る舞いをすることはしばしばあります。
シナプスのゆらぎ=神経伝達物質量の変化でしょうか?
明確に示されていないと思いますが、シナプスの体積変化に起因するグルタミン酸受容体数の変化の影響だと考えています。
「ゆらぎ」の話が興味深かった。(シナプスは学習時にのみ発火すると思っていたので)シナプス個々の反応だけではなく全体の反応をみる必要があるため、分子生物的なアプローチと理論的な(物理に近い)アプローチの両方が脳の解明には必要だろうと思う。
ありがとうございます。理論的なアプローチの持つ可能性をお伝えできて良かったです。
「ゆらぎ」が起こっている時の人間の状態はどうなの?
通常の状態では基本的にシナプスゆらぎは常に起こっていると考えています。
脳のゆらぎは一人ひとり違うのか?=個性?
発達障害での脳のゆらぎには、一定のゆらぎの法則?があるのか?
生型マウスと疾患モデルマウスを比較してシナプスゆらぎが異なっていることを報告した研究があります。シナプスゆらぎの分子機構の違いで人間の個性の多くが説明できる可能性は低いと私は考えますが、学習とゆらぎの効果を統合したシナプス変化は個性を反映している可能性が高いと思います。
動物の脳にはなぜ“ゆらぎ”というシステムがある? 学習のため? ひらめきのため?
タンパク質によって構成される生体システムでは一定のゆらぎを許容せざるを得ないのだと思います。しかし、脳はそれを学習に(もしかしたらひらめきにも)うまく活用しているのではないかと考えています。
強い記憶を保持するためであれば、強いシナプスを安定させた方が生存競争に強くなるように思えるが、強いシナプスを不安定にすることで得られる利点は何なのか?
確かにそういう考え方はできます。だた、われわれの理論は強いシナプスを安定化させる機構の存在を否定していません。安定化には時間やコストを伴うという可能性もあります。これまでの実験結果から類推すると、強いけれど安定化していないシナプスは数多く存在していそうです。
シナプスのゆらぎを制御することで学習障害の治療を行うことができるようになる?
今後の研究の進展を待たねばなりませんが、そうなったら素晴らしいと思います。
マウス実験では過剰なシナプスゆらぎを抑える薬剤の例が示されています。
ロボットが人の脳のようなことができるようになるには、あとどれぐらいかかる?
難しい質問です。現在のChatGPTなどもさまざまな側面で人のような(知識の広さなどに関しては人以上の)応答をしますね。感情的に振る舞ったりプログラムを書き換えるようなロボットを作るかどうかは慎重に考える必要がありそうです。倫理的問題も含めて全盛期と冬の時代を繰り返しながら階段状に発展していくのではないかと予想しています。
ゆらぎによるシナプスの変化ではじめは大きいものも、やがて小さくなるものもあるし、あまり小さくなるものもあるが、なぜか?
単純なモデルでは時々刻々乱数を生成して(サイコロを振って)大きくしたり小さくしたりしているので、たまにはあまり小さくならないシナプスも存在します。実際のシナプスは配置や組成などに応じてもう少し複雑に振る舞うのかも知れません。
人工的に脳を作り、コンピュータのように使うことは可能?
またその場合、その脳の得意な分野と苦手な分野はどうなりますか?
ヒト幹細胞を利用して作る脳オルガノイドは発展途上ですが重要な研究テーマです。将来、コンピューターのように使うことも可能になると予想します。機械と比べた時の長所はエネルギー効率が良いこと・拡張したり再生すること・脳と接続する際の親和性が高いこと、短所は計算精度・速度・記憶容量などで劣ることが予想されます。
脳でのシナプス強さのゆらぎをコンピューター上で再現しようとする場合、量子コンピューターの計算方法を利用することはできる?
可能かもしれません。量子コンピューターの活用は今後の重要な課題だと思います。
同じニューロンが複数の種類の記憶をメモっているとすると、記憶を取出す際にはニューロンのグループはどう接続されるのか?
あちらを立てればこちらが立たず(あるニューロンが活動すると特定の記憶パターンに近づくけれど他の記憶パターンからは離れてしまう)という状況はあります。連想記憶モデルでは与えられたヒントに「近い」記憶パターンに向けてニューロンの活動が変化していきます。沢山のパターンを記憶しすぎるとうまく想起できませんが、記憶容量の範囲内であれば想起が可能です。
研究者のみなさん、プレゼンがとても上手で驚きました。研究者として研究を発信するということを昨今では強く意識されているのでしょうか?
最近の研究は、芸術家としての側面(何かを見出し作り出す)+敏腕の営業としての側面(その商品の良さをアピールし、高く買ってもらう)の双方ができないと花開かないことが多いですね。「頑張っていれば、いつか誰かが見出してくれる!」というような白馬の王子様を待つ時代は終わり、自分で勝ち取っていかないといけません。そのうえで、プレゼンとライティングはマストスキルです。
実際に脳科学の基礎研究が医療に活きた分かりやすい例はあるのですか?(例えばセロトニン仮説→うつ病の治療とか?)
例えば世界初の抗精神病薬であるクロルプロマジンは偶然の産物としての発見です。しかし、クロルプロマジンがなぜ精神症状に奏功するのかということを薬理的に検証した結果、統合失調症ではドーパミンシグナルの大きな変容があることがわかりました(ドーパミン仮説)。その結果、ドーパミン受容体の理解が進み、より良い抗精神病薬の開発に成功しました。ドーパミン仮説だけでは統合失調症の全容を解明できるわけではないので、まだまだ研究は道半ばですが、それでも大きな前進です。同様のことが抗うつ薬にも当てはまります。世界初の抗うつ薬であるイミプラミンは抗うつ薬として開発されたわけではありません。しかし、たまたまうつ病患者に使用したら強い抗うつ効果があったのです。この分子薬理的メカニズムを解明したところ、抗うつ効果のカギは、モノアミン系であることが分かりました。そしてモノアミンを制御するさまざまな抗うつ薬が開発されました。このように、現象を丁寧に観察し、そのメカニズムを因果関係を持ったエビデンスとして積み上げることで、科学は進んでいきます。
異なる個体のマウスでも同じ場所にニューロンかシナプスができるのですか?
そうでないとしたらどうやって個体間の比較をするのでしょうか?
同じニューロンや同じ場所をどのように定義するかが科学の腕の見せ所です。例えば、大脳皮質のFrA部分、そのII/III層にある錐体細胞のTuft部の樹状突起などというように、脳の中の座標や細胞の種類、樹状突起の部位が明確に定義できます。同じ定義の構造物を比較すれば、異なる個体間でも妥当な比較が可能と考えます。
癌の個別化医療と同じように、統合失調症も患者の遺伝子から適切な治療法を割り出していくことを目指すのでしょうか? また、そのためには統合失調症の原因遺伝子ごとに治療法を一つずつ開発していけば良いのでしょうか?
単一の原因(遺伝子など)で説明できてしまう疾患、例えば、ハンチントン病のHtt遺伝子や、先天的な酵素異常にまつわる疾患ならば、そのような考えで正しいと思います。一方で、精神疾患の多くは多因子であり、環境因もあり、発症形式や病態生理は複雑です。原因因子があまりにも多すぎて、原因遺伝子ごとに治療法を開発するのはあまりに大変です(というか不可能です)。そこで、もう少し大きな括りでの理解が重要で、患者さまの層別化は非常に重要です。そのためには、ゲノム情報、脳画像情報、臨床情報などを統合してサブタイプを定義することが重要です。そのサブタイプごとに治療法を確立していけばよいと考えています。
一口に“統合失調症”といっても、患者個々でさまざまな対応が必要というお話をされていましたが、そうなると基礎研究やそれについての実験で得られた成果はどうとらえ、どのように応用すべきと考えられていますか?
モデル動物でも実際の患者さまでも、まずは層別化することが重要です。層別化というのは、疾患のなかでも病態が比較的均一な個人同士をサブタイプとして分け、その各々をしっかりと定義することです。しっかりと定義して、そこで何が実際に生じているのかを解明することは基礎研究の得意とすることです。そのうえで得られた知識を実際のヒト研究へ外挿し、その真偽を検証していくことで真実に近づけると考えています。
巨大スパインが独裁を行うことによって、脳がぐちゃぐちゃになり病気になるということか?
トーク内でお話ししたように大脳皮質の錐体細胞の機能は、多くのシナプス入力を受け取って、その結果、発火するかしないかを決めることです。一つひとつの錐体細胞が民主的な意思決定機関なのです。民主的というのは、神経回路の総意を汲むと例えることもできます。ところが巨大シナプスがあると、そのシナプスからの入力があまりに強く、総意とは無関係に、発火するという意思決定が行われます。そうなると神経回路は大きな混乱をきたすことが想定されますし、実際に計測してみても、そのようなことが起こっていることは間違いがなさそうです。
一般のマウス(人?)にも巨大スパインはある”というお話があったと思うのですが、この作用を私たちが日常のなかで感じることはありますか(できますか)?
また、巨大スパインをコントロールする技術は、どのような物が考えられますか?
巨大スパインを私たちの日常で感じることは恐らくないと思いますし、それがあったとしても現在の技術では証明することは不可能です(最先端のfMRIでもミリ単位の解像でしか脳機能を見ることが出来ません。一方、シナプスはミリの1/1000であるマイクロという単位です)。巨大スパインの操作する方法はマウスでは可能です。巨大スパインにスパイン収縮光プローブを発現させればいいのです。一方、ヒトではそのような技術はありませんし、またもし可能になったとしても、そのような手法をヒトに実装するためには、倫理的な妥当性をクリアする必要があります。
林先生、とても面白いライブトークをありがとうございました!
私も医師をしていて、先生と同じように将来は基礎研究を行っていきたいと考えています。先生の場合、臨床から基礎研究にシフトチェンジするにあたり、どのような決意をしたのか、働く場を見つけたのか、できる範囲でくわしくおしえて下さると大変参考になります。
まずは大学院に入り、実際の研究というものに触れてみましょう。それを貴方がどのように感じるかです。
私の場合、http://multi-scale_psychiatry.riken.jp/message202203.html に記載しているのでご参考にされてください。Good luck!
研究者のみなさん、プレゼンがとても上手で驚きました。研究者として研究を発信するということを昨今では強く意識されているのでしょうか?
研究内容をできるだけわかりやすく伝えることは非常に重要で、いつも心掛けています。
そもそもなぜ老化を進めるDNAがあるのか?
大部分の神経細胞は一生涯活動しますが、加齢とともに徐々にダメージが蓄積します。老化を進める遺伝子というよりは、ダメージを修復したり、修復できないときは除去したりという、若いときには不要だった遺伝子が加齢とともに働く必要が生じていると考えられます。
神経幹細胞の活性化ということだが、もと(神経幹細胞)が少なくなることはあるのか?
神経幹細胞は活性化するとニューロンを生み出し、最後はアストロサイトに分化します。したがって、神経幹細胞の数は徐々に減ります。ただ、最後まで使われない神経幹細胞が多く存在しますので、それらの有効活用を目指しています。
若者にiPaDを注入するとどうなるか?
記憶力増し増しになるのか?
どこかで(記憶力の)限界が来るのか?
マウスの実験では若い時期にiPaDを注入してもあまり効果は見られません。ただし、若年性アルツハイマー病のような疾患に対しては、若い時にも効果があるのではないかと思います。
iPadでも改善しなかった脳の老化現象はありますか?
新生ニューロンの不足だけが老化をひきおこしているのでしょうか……。
iPaDで改善できるのは海馬・歯状回や側脳室からのニューロン新生のみです。ニューロン新生が起こっていない大部分の脳の老化は改善できません。
眠っている神経幹細胞を起こす具体的なもの(食べものや運動など)はありますか?
マウスの実験では、好きなこと(走ること)を自由にできる環境だと神経幹細胞が活性化し、ニューロン新生が活発に起こります。ヒトでは明確に示した実験はありませんが、同様のことが推察されています。
食物の在処を記憶させるマウスの実験では、満腹時より空腹時の方が成績が良いと言われています。やはり、必要に迫られると良く覚えるようです。
神経細胞が増えれば増えるだけ脳機能は上がるのか? 増やすことのデメリットは?
老化だけでなく、うつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)でもニューロン新生は低下しますが、ニューロン新生を復活させると良くなると言われています。さらに増やすとどうなるのかはわかっていません。
ウイルスベクターを利用して遺伝子を導入したと説明していたが、Dyrk1aをノックアウトしたマウスを作出することは可能?
Dyrk1aは重要な遺伝子なのでノックアウトすると胎生致死になります。ヘテロ変異体の場合は、小頭症になると言われています。
iPaDはおそらく老化した神経幹細胞に対するアフターケアになると思いますが、大人になった時の神経幹細胞の活性化を良くするために、事前に(若いときとか)あるいはリアルタイムでなにかできることはある?
マウスの実験からは、リッチ(外からの刺激が多いなど)な環境が神経幹細胞の活性化に良いということが知られています。この結果をヒトに当てはめるのは難しいですが、色々なことを経験することが神経幹細胞の活性化に大事なのではないかと類推しています。
バーンズ迷路試験にて、“覚えている”というのは比較による相対評価で結果を割り出していますか? それとも統一した指標を設けて考察しているのでしょうか?
標的の穴に到達するまでに何回間違えたか、どれくらい時間がかかったか、どれくらいの距離を歩いたかを測定しています。1日2回練習させますが、日毎にどの程度これらの指標が改善するのかも測定しています。これらのスコアから記憶力を判定しています。
iPaDの遺伝子導入により、脳細胞のがん化を来す可能性はある?
病理所見であるアミロイドβやTauはiPadの導入により変化はある?” 高齢マウスの実験ではがん化は見られません。アミロイドβやTauに対するiPaDの効果は現在調べているところです。
神経幹細胞を活発にさせる事はできるが、細胞の数は増やせるのか?
高齢マウスの実験では、iPaDによって幼弱なニューロンの数がかなり増えています。
iPaDはいつごろ頃手に入る? 早くして!
マーモセットで効果が確認できれば、ようやくヒトへの応用を試みることになります。まだ、10年くらいはかかるのではないかと思います。
iPaDをマーモセットに導入することで、マウスと比べどのような知見が得られる?
マウスの結果は必ずしもヒトには当てはまらないことが多いです。したがって、ヒトにより近い動物(マーモセットのような霊長類)を使ってマウスの時と同じ結果が得られるかどうか確認することが重要です。
iPaDの運動神経への応用はどうですか?
大人の脳に残っている神経幹細胞からは運動神経はできないので、現時点で応用は難しいです。
マウスと人とは認知機能低下のメカニズムに違いがある。例えば、アルツハイマー病の場合、アミロイド斑等が増加することで“可塑性”が失われることが原因だと考えられていた。人に適用する場合、新生ニューロンが増加しても、(病気によっては)課題もあると思います。そのあたりの研究はどの程度進んでいるのでしょうか?
アルツハイマー病モデルのマウスやマーモセットが開発されていますので、これからiPaDによってニューロン新生を増やした時にどのような効果があるのかを調べる予定です。
若年性も含め認知症になりやすい人の特徴や傾向などはある?
家族性アルツハイマー病に関しては、特定の遺伝子の異常によることが知られています。それ以外の大部分のアルツハイマー病や認知症の原因に関してはよくわかっていません。ただ、アポE遺伝子には4種類知られていますが、このうちの一つ(ε4)を持っている方はアルツハイマー病発症リスクが高いと言われています。
iPaDで活性化した場合の効果時間はどれくらい? 学習したことや記憶の定着はどうですか?
マウスでは少なくとも3カ月間は効果が続いています。記憶の定着も良くなっているようです。
側脳室と海馬の活発な神経幹細胞でよく発現している遺伝子は一緒ですか?
休眠状態、活性化状態、ニューロン分化に関わる遺伝子は両方の部位で共通です。しかし、側脳室周辺部と海馬とでは異なる種類のニューロンが生まれますので、異なる遺伝子も発現しています。
神経幹細胞の活性化によって老化抑制が起きるときに、シナプスの接続ミスや接続のしにくさは老化個体で依然として起きる?
老齢と若齢とでシナプスの接続ミスや接続のしにくさに違いがあるかどうかは分かりません。iPaDで高齢マウスの認知機能は改善していますが、若齢マウスと同程度までは回復していないようです。
研究者のみなさん、プレゼンがとても上手で驚きました。研究者として研究を発信するということを昨今では強く意識されているのでしょうか?
ありがとうございます。
確かに、最近では研究費提供機関や政府機関が、自分たちの研究成果を積極的に広く一般に伝えることを推奨しています。私自身も、このような活動を楽しんでおり、意味のあるものと感じています。少しでも一般のみなさまの興味を引くことができれば、ジャーナリストに頼ることなく、私たち自身が知見を共有することができます。それが科学者を志す学生たちにとっても魅力的に感じるきっかけとなれば、個人的にはより大きなやりがいを感じます。
何を考えているかをfMRIで可視化できるの?
はい、日本で行われた研究を紹介します。
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2022.11.18.517004v2
言語は多量の単語を含みます。クモの信号が存在するなら、1言語10000~50000語全ての概念が1分おきに(無意識下)で思い出されているのでしょうか?
もしくは関連する概念が同時に思い起こされているのでしょうか?
素晴らしい質問ですね。
実際、一部の研究者は、単語や意味概念の信号をすべてマッピングしようと試みています。私の実験のクモの信号のように、これらの信号は時間とともにゆっくりと変動します。そして、その変動はほとんど無意識のうちに起こります。こちら論文がそのことを詳しく説明しています。
https://www.nature.com/articles/nature17637
無意識的なイメージと意識的なイメージでは、脳が活動する位置が違うの?
アファンタジアは軽度の人と重度の人がいたりするの?
なにをもって無意識とする?
素晴らしい質問ですね。
無意識のイメージを行う際、人は意識的イメージと同じ視覚領域を使用しています。その活動パターンには微妙な違いがあるかもしれませんが、その違いは主に前頭前野と呼ばれる高次の認知領域にある可能性があります。一般的に「無意識」とは主観的な生き生きとした経験がないことを意味しています。実際、アファンタジアにはさまざまな程度があります。
私は多分アファンタジアだと思います。ただこれまでの人生で自覚も困った心当たりもありません。むしろほかの人より先行きを見通したり、想像するのに先んじていると感じることが多いです。
そういう可能性もあります。実際、多くのアファンタジアな人々は視覚的な課題を行うのに問題がないことがあります。何らかの理由で、彼らはほかの(おそらく無意識的な)戦略を使うことができ、結果的にうまくいくことがあります。私たちの研究室で、その戦略がどのようにほかと異なるのか、どのような利点や欠点があるのかを理解しようとしています。